米国における商標保護|newpon特許商標事務所

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米国(United States of America)

 米国における商標権は使用によって権利が発生する使用主義です。米国は使用主義を採用する唯一の先進国です。(日本など多くの国では、商標権が登録によって発生する登録主義を採用しています。)商標保護の仕組みは、コモンローによる権利と連邦レベルでの登録制度、これに加えて各州が独自に制定する登録制度と、多重構造になっています。

米国で商標登録するメリット

 それでは、使用主義の米国で商標を登録する(連邦法による登録制度を利用する)メリットはあるのでしょうか?あるとしたらどのようなメリットがあるのでしょうか?
 主として、以下のメリットが挙げられ、裁判で争った場合などに登録されていない商標に比べて有利になります。      
 1   指定商品/役務に係る商標を米国の一地域でしか使用していなくても、当該商標を出願日から米国全土において使用していたものと擬制されます。§7(15 U.S.C.§1057(c))   
 2   登録により、当該登録商標の所有権の主張を米国全土に対してしたものと擬制されます。その後に第三者が当該商標を使用すると、当該商標を知っていたものとみなされます。§22(15 U.S.C.§1057(c))   
 3   模倣品(侵害品)の輸入を水際で差止めるべく、税関に救済措置を申請できます。   
 4   Rマーク(正式な連邦商標登録を証明するマーク)を付すことができます。連邦商標登録をするほど重視している商標であることをアピールできます。また、登録簿への登録は当該商標の所有権の主張についての告知であると擬制されます。§22(15 U.S.C.§1072)  
 5   商標登録後継続して5年間使用し、その後に「使用宣誓書」を提出すると「不可争性」を獲得でき、当該商標権の有効性について争うことができなくなります。§15(15 U.S.C.§1065)
 通常は、未登録先使用の商標があった場合に、その商標の使用者と“争い”になると、未登録先使用の商標の使用者に“負けて”しまいます。
 しかし、「不可争性」を獲得した場合は、未登録先使用の商標の存在を理由として商標が取り消されることはありません。この場合の未登録先使用の商標の使用者は、その商標を使用している地域における抗弁が可能となるのみです。
 また、商標権侵害訴訟で被告側は商標登録の無効を原則として主張できなくなります。   

A. 商標登録出願(直接出願)

(1)願書の記載

 願書には、出願人の住所及び氏名(法人の場合は名称)を英語又は米国語で表記する必要があります。商標が外国の言葉を含む場合、音訳の添付が必要です。
 住所と名称の表記はすべての出願で統一します。

(2)登録できる商標

識別力ある標識
 ■ 原則として、出願人(自己)の商品を他人の商品から識別することを可能にする商標(語、名称、記号若しくは図形又はその結合など)は登録することができます。
 ■ サービスマーク(役務)も登録できます。
 ■ 自己の商品/役務を他人の商品/役務から識別できれば、日本では登録できない商標の登録も認められます。
   例えば、色彩、トレードドレス(ex.商品のパッケージデザイン、店舗の内外装)、音響、におい、スローガン、光なども商標として登録され得ます。
 ■ 標準文字として商標権を取ると、例えば書体や色を変更した商標についても権利が及ぶメリットがあります。
   したがって、欧文字の商標を米国に出願する場合には、書体や色などについて権利を主張したい特別な理由がなければ、標準文字として出願することをお勧めします。漢字や平仮名文字、片仮名文字を含む商標は標準文字とすることができません。

 ○ ランハム法第2条

   出願人の商品を他人の商品から識別することを可能にする商標は、その性質を理由として、主登録簿に登録することを拒絶されてはならない。

(3)登録できない商標

   主として以下に該当する商標は、原則として登録できません。   

 ● 不道徳的、欺瞞的若しくは中傷的な事項、又はある者(生死を問わない)、団体、信仰若しくは国民的な象徴を軽蔑し、若しくはそれらとの関係を偽って示唆し、又はそれらを侮辱し若しくはそれらの評判を落とすおそれのある事項を含む商標
 ● 生存中の特定の個人を示す名称を含む商標(当該生存者から承諾を得ている場合を除く)
 ● 米国特許商標庁(USPTO)に登録されている商標又は他人によって米国において以前に使用され、かつ、放棄されていない商標又は商号と著しく類似している商標で あって、出願人の商品に付して又は関連して使用されるときは、混同、誤認若しくは欺瞞するおそれのあるものを含む商標
 ● 出願人の商品に付して又は関連して使用される場合に、それらの商品を単に記述するか又は欺瞞的に記述する商標
 ● 出願人の商品に付して又は関連して使用される場合に、主として地理的にこれらの商品を記述する商標
 ● 主として氏姓であるに過ぎない商標
 ● 全体として機能的である事項を含む商標   

(4)出 願

 ■ 「出願の基礎」を以下の4つから特定する必要があります。
  ① 米国での実際の使用に基づく出願
  ② 使用の意思(ITU, intent to use)に基づく出願
  ③ 本国登録に基づく出願
  ④ 本国出願に基づくパリ優先権主張をした出願   

 ■ 「出願の基礎」は複数選択することができます。
  複数の基礎を選択しておくことで、出願後にある基礎が有効でないと判断された場合でも、他の基礎を利用することができます。
  「出願の基礎」を後に追加することもできますが、費用がかかるため、該当すると思われる基礎が複数ある場合は、はじめから複数の基礎を選択しておくことをお勧めします。   

 ① 米国での実際の使用に基づく出願

  既に米国で使用を開始している場合に選択できます。ただし、商標をWebページで広告として使用していたとしても、例えば実際に当該商標を付した商品を出荷した実績がない場合には、その商品について「米国での実際の使用に基づく出願」はできません。
  商品についての商標の使用とは、商品に商標を直接付すか商品との関連において商標を使用すること(ランハム法45条 Use in Commerce)であり、広告的な使用は商品についての商標の使用とならないためです。
  一方、サービスマーク(役務)は広告的に使用された場合でも商標の使用とされています。
  商標の使用開始日(日本を含めた世界で初めてその商標を使用した日)や米国の州際又は国際取引における使用開始日の情報や使用見本などが必要となります。     
注(1)  商標法の適用上、「標章が、サービスの販売又は広告において使用されるか又は表示され、かつ、そのサービスが取引上提供されるか又はそのサービスが1以上の州において若しくは合衆国と外国において提供され、サービスを提供する者がそのサービスに関連して取引に従事しているとき」取引上使用されるとみなされます。したがって、プロモーションや広告など他の活動と関連した商標の使用は、使用を基礎とする出願の要件である「取引上の使用」を構成しません。  

 ② 使用の意思に基づく出願

  まだ米国で使用していないが、商標を取引において使用しようとする誠実な意図(bona fide intention)を有している場合に選択できます。

 ③ 本国登録に基づく出願

  例えば日本で商標登録されている場合に選択できます。本国登録の国、登録番号や登録日の情報、本国登録証の写し、その訳などを提出する必要があります。
  登録前に米国で使用されていたことは要求されませんが、米国で誠実に使用する意図が必要です。

 ④ 本国出願に基づくパリ優先権主張をした出願

  本国(日本)での商標登録出願日から6か月以内であれば選択できます。基礎出願国、出願番号、出願日などの情報が必要となります。また、当該商標を取引において使用する誠実な意図が必要です。
  その後に本国で商標が登録されれば、通常は本国登録に基づく出願とされます。

 ■ 指定商品(役務)の記載

  具体的に記載することが求められます。例えば、日本では出願する商標を帽子にしか使用するつもりがない場合でも、指定商品を「第25類 被服」とすることが認められます。この「被服」には、帽子だけではなく、ジャケット、ズボン、スカート、マント、寝巻き、下着、水泳着、帯、エプロン、ネクタイ、マフラーなどが含まれるからです。
  しかしながら、米国では、指定商品(役務)を個別具体的に記載しなければならないので、日本出願の指定商品(役務)をそのまま英語に翻訳して米国出願すると、多くの場合、審査官から拒絶されます。
  したがって、米国で帽子について商標を使用し、商標権を取得したい場合には、例えば、「Hats」、「Caps [headwear]」のように具体的に記載します。   記載例:clothing, namely, shirts, pants, belts, and T-shirts
    
注(2)  Trademark ID Manual  
注(3)  including~(~を含む)は、EUTM,欧州各国で比較的使用されますが、米国では認められません。  

(5)委任状(Power of Attorney)

 提出する必要があります。出願後でも認められます。公証人の認証は不要です。

(6)優先権証明書(Priority Document)

 優先権証明書類は出願の日から3か月以内に補完することができます。

(7)審 査

 ■ 実体審査(substantive examination)

 識別力の有無、商標の類似性などについて実体審査がされ、登録要件を満たさない場合には拒絶理由通知(オフィスアクション)が発せられます。出願人は拒絶理由通知の送付日から6か月以内に意見書や補正書で応答・反論することができます。
  また、権利不要求(disclaimer)や同意書(consent)の制度を利用して、拒絶理由を解消できる場合があります。
 出願から最初の通知がされるまでの期間は、平均して3か月とかなり早く(短く)なっています。   

 拒絶理由通知への応答・反論によっても拒絶理由が解消しない場合には、拒絶査定(ファイナルアクション)が発行されます。
 拒絶理由がない場合、又は、拒絶理由が解消した場合は、出願内容が公告(公開)されます。   

(8)異議申立

 ■ 付与前異議申立

 出願公告後30日以内に、その商標の登録によって損害を受けると考える者(国際登録の領域指定の出願公告後30日以内に、当該国際登録の領域指定の保護により影響を受ける者)は何人も異議申立をすることができます。     
注(4) アメリカ合衆国(米国)25頁  (6)拒絶理由解消後又は拒絶理由が存在しない場合の登録までの概略  

(9)登 録

 出願公告された後に何人からも異議申立がされなかった場合や、異議申立がされた場合でもその申立が取り下げられたり、異議申立が不成立の場合には、出願商標は登録されます。
 この場合、「使用の意思に基づく出願」に対しては、登録許可通知が発行され、6か月以内に使用宣誓書及び使用証拠を提出することで登録が認められます。  商標権の存続期間は、登録日から10年間です。
 商標登録後5~6年の間に使用宣誓書と使用証拠を提出する必要があります。これには、登録されても使用されない商標を整理する目的があります。     
注(5) アメリカの商標使用証拠:  ウェブページを商品商標の使用証拠とする際の注意点  

(10)更 新

 商標の使用が、使用を再開しない意図をもって途絶したときは、商標は「放棄された」(ランハム法45条 Abandonment)ものとみなされます。
 この「再開しない意図」は、状況から判断されます。
 継続して3年間の使用していない商標は、放棄されたとの一応の推定がされます。
 商標を使用しているというためには、通常の商行為の過程において商標を誠実に使用している必要があります。単に商標の権利を留保するために行われるものは「使用(Use in Commerce)」と認められません。

(11)取消しになる不使用の期間

 商標の登録は、10年ごとに何度でも更新することができます。商標登録後5~6年の間に使用宣誓書及び使用証拠を提出する必要があります。これには、登録されても使用されない商標を整理する目的があります。

(12)商標権の発生

 商標権の存続期間は登録証発行の日(登録日)から10年間ですが、出願日から3年以内に商標が実際に使用されていることの「使用宣誓書」を提出しなければならなりません(法124条2項)。
 10年ごとに更新が可能です。更新手続は、原則として、存続期間満了前6か月から満了日の間に行う必要がありますが、6か月の猶予期間が認められます。
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B. マドプロ出願

 マドリッド協定議定書(マドプロ)の加盟国です(2012年7月25日発行)。したがって、マドプロに基づく国際商標出願が可能です。(2文字コード:US)
 国際登録出願(マドリッドプロトコル)で米国を指定した場合には、出願と同時に「標章を使用する 意思の宣言書」(MM18)を提出しますることが必要です。
 
 

C. リンク

 ■ 米国特許商標庁(USPTO):http://www.uspto.gov/
 ■ 商標検索サイト(TESS) : Trademark Electronic Search System (TESS)
 ■ 特許庁サイト(日本語):  米国商標法      米国商標規則
  

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