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マレーシア(Malaysia)
マレーシアは、イギリス連邦加盟国であり、タイ、インドネシア、ブルネイと陸上の国境線で接しており、シンガポール、フィリピンと海を隔てて近接しています。1976年商標法(以下、単に「法」といいます。)は、1994年改正により、1) サ-ビスマ-ク登録制度の導入、2) 10年毎の更新期間、3) パリ条約による優先権主張の受入れが規定され、2000年改正によりTRIPS協定が規定されました。先使用主義の国です。
A. 商標登録出願(直接出願)
(1)願書の記載
願書には、出願人の住所及び氏名(法人の場合は名称)を英語又はマレ-語で表記する必要があります。出願商標の誠意ある保有者であること等を宣誓するた宣誓書(declaration)を提出しなければなりません。
一出願一区分です(規則18条(2))が、一出願多区分制度は採用されていません。イギリスやインドと同様に、シリーズ商標(series of trade marks, 連続商標)制度1が採用されています(法24条)。
注(1) | 商標の要部が共通し、識別力のない部分のみが異なるものを一出願に含めることができるというもの。書体の違いや色違いをシリーズとして含めることができます。 |
(2)商 標
「標章」とは、図案,ブランド,標題,ラベル,チケット,名称,署名,語,文字,数字又はこれらの組合せを含み、「商標」とは、証明商標を除いては、商品若しくは役務と、権利者若しくは登録使用権者(registered user)として標章を使用する権利を有する者との間の、取引上の関係を、その者を特定しているものであるかどうかに拘らず、表示する目的のために又は表示するために、その商品若しくは役務に関連して使用されている若しくは使用が予定されている標章をいいます(法3条(1))。立体商標、色の組合せが商標保護の対象となっていますが、音響、匂い、味、単色、ホログラム、動体標章は保護対象ではなりません。
(3)指定商品(役務)
ニース協定に基づく国際分類を採用しています。第9類において、「machines(機械器具)」、「applied electronic machines and apparatus(電子応用機械器具)」という包括的な記載は認められていません。ただし、「computers(電子計算機)」、「parts of computers(電子計算機の部品)」は認められます。「parts and fittings for all the aforesaid goods(上記のすべての商品に関する部品・備品)」、「all included in Class 何々(この区分に属するすべての商品)」、「parts and spare parts(部品及び交換部品)」、「parts and supplies(部品及び補給用品)」、「accessories(附属品)」等も認められます。第35類において、「一般的な商品の小売り」(retail services of goods)は認められません。(4)証明商標制度(certification trademarks)
証明商標を出願する者は、その証明が権威あるものとして評価されるだけの能力・権限を備えていなければなりません。その証明は、出所、材料、製造方法、品質、精度又はその他の特質に係わるものでなければなりません。出願人は、第三者が製造又は提供する製品・役務の種々の特質や品質を証明する権能を有する製造業者団体、技術研究機関又は政府機関でなければなりません(法56条)。(5)委任状
委任状(authorization)の提出は不要ですが、公証済み(領事認証は不要)の使用宣誓書(statutory declaration)が求められるます。(6)優先権証明書
優先権証明書類を、出願時に同時に提出することは義務付けられていません。(7)審査
■ 実体審査(substantive examination)
不登録事由、識別力の有無2、先行商標との類似性等について実体審査が行われています。商標の使用の有無は、審査の対象とはされていません。先使用主義が採用されています。同一又は類似の商品・役務について、2以上の同一又は類似の商標が出願された場合には、各出願人の権利(their rights)が裁判所により確定されるまで、又は商標登録局長若しくは裁判所が承認した和解合意がなされるまでは、いずれの出願についても登録を拒絶することができます(法19条(3))。
同意書(コンセント、consent)が認められています。同意書に基づいて公告・登録された場合には、その旨が公告公報・登録簿に「By consent」と記載されます(規則33条(3),52条(4))。
権利不要求制度(disclaimer)が採用されています。商標のある部分が、1)その出願人による別個の商標出願対象とはならない場合、2)その出願人により別個に商標出願されても、登録されない場合、3)商取引上普通に使用されている、又は識別力を有さない場合、商標登録局長が権利不要求を要求ことができます(法18条)。
注(2) |
商標の識別力についての審査が大変厳しいといわれています。 出願前に、出願予定の商標が識別力を有するか否かについて、商標登録局に書面にて相談できるシステムがあります。「登録可能」とのアドバイスを得て出願したが、出願が拒絶されたときには、出願手数料の返還を請求できます(規則第17 条)。 |
■ 連合商標
(a) 同一の商品(サービス)若しくは同一種類の商品(サービス)について又はそれら商品(サービス)と密接に関連するサービス(商品)について,同一所有者の名義で登録されているか又は登録出願の対象となっている別の商標と同一であるか,又は、(b) 所有者以外の者が使用すれば,当該別商標と誤認若しくは混同を生じさせる虞がある程に類似する場合は,登録官はいつでも,これらの商標を連合商標として登録簿に登録するよう要求することができます(法22条)。■ 連続商標
(1) 単一の類における同一の商品(サービス)若しくは同一種類の商品(サービス)又は単一の類における同一のサービス(商品)若しくは同一種類のサービス(商品)についての数個の商標が,重要な特徴においては相互に類似するが,(a) それら商標が使用され若しくは使用を予定される商品又はサービスについての陳述又は表示,
(b) 数量,価格,品質若しくは場所の名称に関する陳述又は表示,
(c) その他の事項で識別性がなく,かつ,それら商標の同一性に本質的な影響を及ぼさないもの,又は
(d) 色彩,
について異なり,かつ,それら商標の所有者であることを主張する者がそれら商標の登録を出願するときは,それら商標は,1の登録をもって連続したものとして登録することができます。
(2) 連続したものとして登録されたすべての商標は,連合商標とみなされ,かつ,連合商標として登録されます(法24条)。
■ 団体商標制度(collective trademarks)
団体商標制度は導入されていません。■ 保証商標制度(guarantee trademarks)
保証商標制度は導入されていません。■ 拒絶理由通知
拒絶理由通知書を受領してから2か月以内に、補正書・意見書を提出することができます。出願商標が識別力を有しないとの拒絶理由であれば、実質的な変更と認められない範囲で、商標見本を僅かに補正(minor modifications)することが許されます。商標登録出願が無条件に又は一定の条件,補正,修正若しくは制限の下に受理されたときは,登録官は,受理後できる限り速やかに,その受理された出願を所定の方式で公告させます(法27条(1))。
商標の登録出願が出願人の懈怠により出願日から12月以内に完了しなかった場合,登録官は,出願人に対して所定の方式により書面をもって出願未完了の通知を行い,その通知に指定した追完期間内になお出願が完了しない限り,当該出願は放棄されたものとして扱うことができます(法29条)。
(8)異議申立
■ 付与前異議申立
識別力を有する商標出願または迅速な手続が好ましいと判断されるものについて は、公告決定(acceptance)を待たずに直ちに公告されます。この場合、公告後に審査さ れるのでその審査結果によっては、再度公告されることもあります(法27条(2),(3))。公告公報が、紙媒体として英語又はマレ-語で発行されています。CD-ROM やインタ-ネットという媒体による公告・公開はありません。
異議申立期間は、公告から2か月以内(延長可)です。
(9)商標権の発生・存続期間
一出願一区分制度です。登録公報は発行されていません。商標権の存続期間は登録日から10年間です。10年ごとに更新が可能です。更新手続は、原則として、存続期間満了前3か月以前に行う必要がありますが、3か月の猶予期間が認められます(満了日から1年以内であれば登録回復あり)。
B. マドプロ出願
マレーシアは、マドリッド協定議定書(マドプロ)に加盟していないので、マドプロに基づく国際商標出願はできません。C. リンク
■ マレーシア知的財産庁(myipo) :http://www.myipo.gov.my/■ 商標検索サイト :https://iponline.myipo.gov.my/ipo/main/search.cfm
■ 特許庁サイト(日本語): マレーシア商標法 マレーシア商標規則