newpon特許商標事務所
ベトナム(Republic of Viet Nam)
2022年6月16日、改正知的財産法第07/2022/QH15号(「改正法」)採択。改正法は2023年1月1日から(音商標の保護は2022年1月14日に遡って)施行された。 ベトナムでは先願主義が採用されていますので、日本企業がベトナムで生産委託を行う場合、第三者に先駆けて可能な限り速やかにベトナムで商標を登録することをお勧めします。ベトナムでは商標に関して先使用者権は存在しません。A. 商標登録出願(直接出願)
(1)願書の記載
願書には、出願人の住所及び氏名(法人の場合は名称)をベトナム語で表記する必要があります。出願書類には商標の標章見本(色や形)とともに、その標章の意味や説明が求められます。1つの商標について1件の出願を行う(一出願一商標)制度です。
(2)商 標
商標とは,異なる組織又は個人の商品又はサービスを識別するために使用される何らかの標識(法4条(16))。商標として登録できる標識は、文字、数字、単語、絵、画像(立体画像を含む)またはそれらの組み合わせの形で、1つまたは複数の指定された色で表示される可視標識。
スローガンは、識別性を有していれば、商標として登録されます。匂い、味、単色、ホログラム、動く商標は保護対象となっていません。
ラテン文字以外の文字(片仮名、平仮名、漢字、アラビア文字、韓国文字など)などからのみ構成される商標は、識別力がないと判断されます。この種の商標についてはベトナム国内で使用による識別力が認められない限り、登録はできません。日本の商標を効果的に守るためには、大文字と二段構成にして出願することが考えられます。
(3)指定商品・役務
ニース協定に基づく国際分類を採用しています。「一般的な商品の小売り」(retail services of goods)は役務(第35類)に、「通信回線(インターネット)を通じて販売されるコンピュータープログラム」は商品(第9類)に含まれます。指定商品・役務の表示において、包括的と判断される表現は認められていませんが、第9類において、「machines(機械器具)」、「applied electronic machines and apparatus(電子応用機械器具)」、「computers(電子計算機)」、「parts of computers(電子計算機の部品)」などは認められています。
一出願多区分制であり、指定区分数の制限はありません。
(4)委任状
委任状には出願人の氏名及び住所、選任された代理人の氏名及び住所、委任の範囲、委任期間、委任日、出願人の署名及び捺印(印鑑を有する場合)の明記が必要です。公証及び認証(legalization)は不要です。包括委任状が認められています。出願時には委任状のファクシミリによる写しが認められます。原本は、出願日から1か月以内に提出しなければなりません。(5)優先権証明書
出願時には優先権主張の基礎となる出願の写しが認められます。ベトナム国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam: NOIP)の要求により、当該出願が出願された当局による当該出願の認証コピー及びそのベトナム語翻訳文をNOIPが要求した日から1か月以内に提出しなければならなりません。また、ベトナム語翻訳文を提出することが必要です。(6)審査
■ 実体審査(substantive examination)
識別力の有無、先行商標との類似性等について実体審査が行われています。商標の使用の有無は、審査の対象とはされていません。特定商品の小売りと特定商品は類似と判断されます。先願主義が採用され、出願日は国家産業財産権庁に到着した日によって判断されます。実体審査の期限は公開日から起算して9か月です。
いわゆるコンセント(consent)は、規定はないが、認められています。ただし、先行商標所有者から提出された同意書が、その先行権利者の権利を侵害せず、かつ消費者に誤認混同を与えるものではない場合に限られます。また、共存契約(Co-existent Agreement)が存在する場合、商標登録が認められます。
権利不要求制度(disclaimer)が採用されています。
■ 団体標章(collective trademarks)
団体標章とは,当該標章所有者である組織の構成員の商品又はサービスを非構成員のそれらと識別するために使用される標章です(法4条(17))。■ 証明標章(certification trademarks)
証明標章とは,出所,素材,原材料及び商品生産の方法又はサービス提供の方法,当該商品又はサービスの品質,正確度,安全性又はその他の特質に関係する特質を証明するために,組織,個人が自らの商品又はサービスに使用することをその所有者により許諾された標章です(法4条(19))。■ 連合標章
連合標章とは,同一所有者により登録される標章であって,同一か又は相互に類似し,同一若しくは類似の又は相互関連の商品及びサービスに使用される標章です(法4条(19))。■ 拒絶理由通知
審査官が拒絶理由を発見したときには、拒絶査定前に書面で通知され、出願人は通知日から2か月以内に拒絶理由に対して応答手続をとることができます。直接出願の場合、たとえ拒絶の内容が、「出願の一部に拒絶理由がある」との場合であっても、応答手続をとらない限り、その出願自体が拒絶されてしまいます。いわゆるコンセント(consent)制度が実務上採用されていますのでので、先登録商標の商標権者の同意書があれば、原則として類似する商標の登録が認められます。
拒絶理由が克服できない場合は拒絶査定となります。拒絶査定に対して出願人は3か月以内に、審判部に不服審判を請求することができます。拒絶理由通知に対して審査官に意見書を提出しても認められないことが多いので、直接審判を請求することもあります。
拒絶理由が克服できたときには登録決定となります。
(7)異議申立制度
異議申立制度はありません。(8)商標権の発生・存続期間
一出願多区分が認められていますが、出願後は区分毎に出願番号が付され、登録番号も区分毎に運用されていますので、ナショナルルート(直接出願)では、実質上の一出願多区分が実現されていないことになります。ただし、マドプロ出願では、一出願多区分のメリットを享受できます。商標権の存続期間は登録日から10年間です。10年ごとに更新が可能です。更新手続は、原則として、存続期間満了前6か月以前に行う必要がありますが、6か月の猶予期間が認められます。商標の登録に使用されていることは要求されませんが、取消請求の前5年間以降正当な理由なく使用されていないときは、当該商標登録は取り消されます。
B. マドプロ出願
ベトナムは、マドリッド協定議定書(マドプロ)加盟国です。したがって、マドプロに基づく国際商標出願が可能です。(2文字コード:VN)審査官が拒絶理由を発見したときには、全体拒絶通報(total refusal)又は部分拒絶通報(partial refusal)が出されます。部分拒絶通報を受けた場合、そのまま放置しておいても、拒絶の対象になっていない部分については、そのまま自動的に登録になります。
いずれの拒絶通報に対しても、審査官への意見書の提出の機会はありません。不服がある場合には、審判部へ不服審判を請求します。
C. リンク
■ ベトナム知的財産庁(商標):Intellectual Property of Viet Nam■ 法律第 07/2022/QH15:知的財産法の諸条項の改正及び補足に係る法律
■ ベトナム商標検索サイト :IP Information Service
■ 特許庁サイト(日本語): 諸外国・地域・機関の制度概要 ベトナム知的財産法