応用美術について,著作権法上,明文の規定が存在しないが、著作権法の目的(同法1条)に鑑みると,『表現物につき,実用に供されること又は産業上の利用を目的とすることをもって,直ちに著作物性を一律に否定することは,相当ではない。同法2条2項は,「美術の著作物」の例示規定にすぎず,例示に係る「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても,同条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,「美術の著作物」として,同法上保護されるものと解すべきである。』と判示し、控訴人製品(幼児用椅子)の形態的特徴が「創作的」な表現であると認め,「美術の著作物」に該当するとした。 | |
いわゆる「自炊代行サービス」について知財高裁は、 『控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。 そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。』と判示した。つまり、控訴人は複製行為の主体ではなく、利用者の「補助者」ないし「手足」であるから著作権侵害には該当しないという控訴人の主張を認めなかった。 また、『本件サービスは,利用者個人が,私的領域において自由かつ簡単にできる書籍の電子ファイル化を代行するものにすぎず,利用者が書籍の購入,電子ファイル化する書籍の選別,送付,電子ファイルの様式に関する具体的な指示等をしていることから,利用者の私的領域内における自由な行為を実現するものであり,また,本件サービスにおいては,利用者が適法に取得した書籍を対象としており,権利者に対価が還元されていること,電子ファイル化に供された書籍は廃棄され,同一書籍から複数回の複製がされることはなく,大量複製を誘発しないこと,明示的に電子ファイル化を拒否する権利者の書籍については不可作家として本件サービスを利用できないことなど,本件サービスは零細な事業であり,著作権者に経済的な不利益を与えるものではない』から私的利用(著作権法30条1項)であるという控訴人の主張も認めなかった。(判例時報No.2246 92頁) ※ いわゆる「自炊代行業者」について、複製行為の主体であると認めるとともに、著作権法30条1項の適用を否定して、著作権侵害を認めた事例―自炊代行事件―(紋谷 崇俊,The lnvention 2015 No.7) | |
『実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである』として分離可能性説を採用した。 『他方,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。』 | |
北朝鮮は、ベルヌ条約に加盟国してはいるものの,我が国は北朝鮮を国家承認していないから,北朝鮮の国民を著作者とする著作物は,著作権法6条3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」には該当しない。 しかしながら,控訴人らは,同著作物の利用について民法709条の法律上保護される利益を有しており,被控訴人による本件無許諾放映は,控訴人らの有する法的利益を侵害するものとして不法行為を構成するとし、金10万円の損害額と弁護士費用の損害金2万円を認めた。 ※著作権法による保護を拒否したものの不法行為による救済を認めたもの:YOL記事見出し(知財高裁判H17.10.06), 木目化粧紙事件(東京高裁判H03.12.17) | |
著作物性は認められないと判断されたが、違法性があり不法行為(民法709条)は認められた例。このような裁判決として、① 木目化粧紙事件(東京高判H3.12.17, H2年(ネ)第2733号)、② 車両データベース事件(東京地判H14.03.28, H8年(ワ)第10047号)③ 書類作成支援ソフトウェア事件(大阪地判H14.7.25, H12年(ワ)第2452号)などがある。 ※判決紹介 弁理士石井茂樹 Patent Vol.59 No.8 p.70-74) | |
菓子類のおまけとなる各種のフィギュア(もともとは輪郭や人の姿の意味であるが,転じて人形や模型を指す。)の模型原型が美術の著作物に該当するとされた事例。(判時No.1928,p116) ※判決研究 国士舘大助教授 本山雅弘 Law & Technology No.32 2006/7 p.86-95 | |
インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は、著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく、著作権侵害となる書き込みがあった際には、これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には、可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし、更には、著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど、速やかにこれに対処すべきものである。 ※判決紹介 弁理士石井茂樹 Patent Vol.59 No.8 p.66-69) | |
名古屋市などにある7つの社交ダンス教室が無断で音楽CDをレッスンに使ったとして、JASRACが経営者らに使用料などを求めた訴訟。社交ダンス教室においてCD等に録音された音楽著作物を再生演奏するのは、著作権法22条の規定する公の演奏にあたり、同法38条の規定する非営利で料金を受けない演奏には当たらない。(判時No.1870,p123) 最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は、教室側の上告受理棄却決定をした。 | |
電子ペット玩具「ファービー」人形が我が国著作権法の保護対象の一つである「美術の著作物」たり得るかであるが争われた事件(2条1項1号,同条2項,6条3号,10条1項4号)。本件玩具の模倣品販売業者に対する著作権侵害罪による起訴について,米国著作権登録もあるところ我が国著作権の成立が否定され無罪が言渡された。 | |
32条(引用)の解釈 | |
交通標語の著作物性。参考判決。 | |
個人(控訴人)が著作物の類似性について NTT(被控訴人)を訴えた事例。控訴人は、控訴人漫画のキャラクターの配置や眉毛の形において、被控訴人のキャラクターが一見横一列に並んでいるかのように見える構図であり、類似すると主張したが、裁判所は否定した。 | |
共同著作物の権利の処分、行使(著63条Ⅱ、64条Ⅰ、65条Ⅰ/Ⅱ)。漫画の物語作者Aと絵画作者Bが別人のとき、Aの許諾が得られないとき、Bがキャラクター絵画を利用することができるか?(判時No.1726 p162) |