容易想到性判断の誤り(取消事由1)及び手続違背(取消事由2)が認められ、審決取り消し。訴訟代理人弁護士 鈴木修(ユアサハラ) | |
2008(H20).8.31 知財高裁 H21年(行ケ)10434 「伸縮性トップシートを有する吸収性物品」事件|pdf | |
特許法36条6項2号に違反する旨の審決が取り消された事例。 法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関して,「特許を受けようとする発明が明確であること。」を要件としているが,同号の趣旨は,それに尽きるのであって,その他,発明に係る機能,特性,解決課題又は作用効果等の記載等を要件としているわけではない。(特願2003-515189号,不服2007-30633号事件)(判例時報No.2091) ※同様な判決:2008(H20).10.30 知財高裁 H20(行ケ)10107「新聞顧客の管理及びサービスシステム並びに電子商取引システム」(不服2005-19713号事件) | |
人の行為により実現される要素が含まれ,人の精神活動が必要となる発明であっても,人の精神活動を支援するための技術的手段を提供するものであり,特許法2条1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとして,同項の「発明」に該当しないとした審決が取り消された。 『 ・・・ 人の精神活動それ自体は,「発明」ではなく,特許の対象とならないといえる。しかしながら,精神活動が含まれている,又は精神活動に関連するという理由のみで,「発明」に当たらないということもできない。けだし,どのような技術的手段であっても,人により生み出され,精神活動を含む人の活動に役立ち,これを助け,又はこれに置き換わる手段を提供するものであり,人の活動と必ず何らかの関連性を有するからである。 ・・・ 他方,人の精神活動による行為が含まれている,又は精神活動に関連する場合であっても,発明の本質が,人の精神活動を支援する,又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである場合は,「発明」に当たらないとしてこれを特許の対象から排除すべきものではないということができる。』(判例時報No.2026) ※同様な判決:2008(H20).8.26 知財高裁 H20(行ケ)10001「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」(特願2003-154827号 ※発明性について判断した判決: ① 2006(H18).9.26 知財高裁 H17(行ケ)10698, ② 2007(H19).10.31 知財高裁 H19(行ケ)10056,③ 2008(H20).2.29 知財高裁 H19(行ケ)10239 | |
判決要旨は次のとおり:① 訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということガできる。 ② いわゆる「除くフレーム」とする訂正が,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。 ③ 訂正における登録商標は,先願明細書に基つく特許出願時において当該登録商標によって特定されるすべての製品を含むものであるということができるから,当該登録商標によつて特定された物が技術的に明確でないとはいえない。 ④ いわゆる「除くクレーム」とする訂正において,登録商標の記載を使用して除外部分を表示したことが,特許法施行規則が定める「当該登録商標を使用しなければ当該物を表示することができない場合」における登録商標の使用である。 ※知財高裁詳報(Law & Technology No.40,p84) | |
ハッシュ法は数学的な課題を有し,数字上の計算式(ハッシュ関数)として表現可能なものであり,しかも,同装置は既存の演算装置を用いて上記数学的アルゴリズムを演算することを内容とするものにとどまるから,本願発明の実質は数学的なアルゴリズムそのものというほかなく,これをもって,特許法2条1項の定める「発明」に該当するということはできない旨判示。(判時No.2012) ※前審:不服2004-13406号事件,H11年特願295775[特開2000-122538〕 | |
結論の中で、特許庁の審判合議体が、請求項基準説を採用している思われる点について適切な措置であると評価できるとある。(判例時報No.1779,p89) ※ 複数の請求項について訂正審判が請求された場合における訂正の許否については, ①「一体説」(改善多項制導入前と同様に訂正審判請求全体を一体のものとして,一部の請求項に係る訂正につき特許法所定の要件を満たさない点があれば,他の請求項に係る訂正について要件充足の有無を判断するまでもなく,請求に係るすべての請求項についての訂正を許さないものとすべき)と, ②「請求項基準説」(請求項ごとに訂正が特許法所定の要件を満たすものかどうか判断した上で,訂正審判請求のうち,要件を満たさない請求項に係る部分のみについて訂正を許さないものとし,要件を満たす請求項に係る部分については訂正を許すものとすべき) に分かれていた。 → 2008(H20).7.10 第一小法廷判決H19(行ヒ)318「発光ダイオードモジュール」事件 ※2007(H19).7.23 知財高裁 H19(行ケ)10099 編み機およびヤーン切替え装置事件|(判例時報No.1998,p110) | |
特許無効審判(請求項1,2,4の無効請求)中、特許権者は請求項4の訂正請求をし、①訂正を認める、②請求項1,2の特許を無効にする、③請求項4についての審判請求は認められない、との審決があった。特許権者は審決②についての取消訴訟提起したが、請求人は④について取消訴訟提起しなかったため、訂正は確定。裁判所は、審決②を取り消し、審判に差し戻した。(特許庁での再審理の結果、請求項1,2の無効確定【無効2006-080039】) さらに、「2以上の請求項に係る無効審判請求においては,無効理由の存否は請求項ごとに独立して判断されるのであり,個々の請求項ごとの審判が同時に進行しているものとして考えるのが,無効審判制度の趣旨に沿うものである。そうすると,無効審判の審決において認められた訂正の効力についても,個々の請求項ごとに生ずる。」とし、特許法134条の2第4項のみなし取下げの規定は,上記のような無効審判制度を前提としているから,その効果も請求項ごとに生じると解するのが相当であることを示した。(判例時報No.1997,p119) ※論文「特許無効審決中の訂正請求に係る判断とみなし取下げとの関係」(弁護士川田篤,PatentVol.60 No.11,p24) | |
引用発明の一体となっている構成の中から本願発明に類似する部分のみ取り上げて、これを一致点として認定することは、ひとまとまりの技術的思想として引用発明にない構成を認定することになり許されないとして審決を取り消した。 | |
本願発明の請求項1は、「アスナロ又はその抽出物を有効成分とするシワ形成抑制剤」であり、引用公報には、アスナロ抽出物を有効成分とする美白化粧科組成物が記載されていた。審決は、本願発明は引用発明と同一発明であるから新規性がないと判断した。 判決は ,当業者が,本願出願当時,引用発明の「美白化粧料組成物」につき,「シワ」についても効果があると認識することができたとは認められず,本願発明の「シワ形成抑制」という用途は,引用発明の「美白化粧料組成物」とは異なる新たな用途を提供したということができる、として審決を取り消した。 | |
「○○○に用いる」という特許請求の範囲の記載が「物」の発明の構成を限定する意義を有しないとされる一方,容易想到という特許庁の判断が覆された事例。 ※「○○○方式に使用される」との記載: 2006(H18).08.31 知財高裁 H17(行ケ)10665「静電潜像現像用トナー」事件 | |
実施可能要件不備。C12H22O11・3H2Oの分子式を有する結晶ラクチュロース三水和物(森永乳業) | |
サポート要件。遺伝子に関する発明は,有用性が明らかにされて初めて産業上利用できる発明として認めるべきものであるのに,明細書の発明の詳細な説明に記載された有用性の明らかな核酸分子のみならず,有用性を有しない核酸分子をも包含している本願発明の特許請求の範囲は,発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものを記載していることとなり,特許法36条6項1号の記載要件を満たしていない。 | |
特許庁が異議2003-72297号事件についてした決定が取り消された。進歩性あり。 | |
後の出願の明細書及び図面に新たな実施例を加えることにより,後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨とする技術的事項が,先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることとなる場合には,その超えた部分について優先権主張の効果が認められない。 | |
「複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正の許否の判断をすべきか否か」について、「本件訂正請求は,それぞれ請求項ごとに別個独立のものとして理解し得るものであり,本件において請求項ごとに訂正の許否を判断するのに特段の支障は認められない。」とした。(判時1821.118) cf. 最一判S55.5.1(判例時報No.967,p49)「請求の一部についてのみ訂正を許す審判をすることはできない旨を判示。」 | |
請求棄却。被告が予備的に主張しようとしているのは,審判段階ですでに取り上げられていた公知事実を前提に,そこから結論を導き出すための根拠とする事由を変更したにすぎない,本訴において,引用刊行物1の新たな把握に基づいて審決の判断の当否の認定判断をしたとしても,必ずしも,原告に保障されている,専門行政
庁たる特許庁の審理判断を受ける利益が害されるとはいえず,最大判昭51.3.10 の趣旨に反するともいえない,と判示した。 | |
「人間を診断する方法」(医療行為)は、「産業」(特許法29条2項柱書)に該当しない。(判時1828.99) | |
「無限摺動用ボールスプライン軸受」事件の高裁判決(控訴人勝訴)。→最高裁判決 | |
本件出願日後に出願された先願を、出願人がその特許出願を取り下げたにもかかわらず、優先権を主張してなされた出願であることを理由に「当該特許出願の日前の他の特許出願」(29条の2)として取り上げ、本件出願を拒絶したのは誤り。 |