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特許法-地方裁判所-



2016(H28).7.13 東京地判H25(ワ)19418 累進多焦点レンズ及び眼鏡レンズ事件

 提起されている特許無効審判内でXが訂正の手続を行っているにもかかわらず、実は通常実施権者から特許法127条の承諾を得ていなかったため、侵害訴訟で訂正の再抗弁を主張する場合にも、同じように通常実施権者からの承諾を要するかが争われた事例である。
 裁判所は、訂正の再抗弁を主張する場合においても、訂正と同様、特許法127条の承諾が必要だと判断した。
 判決研究 北大教授 吉田広志 L&T No.80 2018/7 p.61-68, 比較法研究センター知的財産判例研究会2018.1.12
 この論文の中で、彼は、本判決は「実施許諾を受けた範囲が不当に狭められるなど、通常実施権者等が不測の損害を被ることがある」と述べるが、これは法的に保護することではないので、特許法127条から許諾による通常実施権者を削除することを提案している。
 

2010(H22).3.31 東京地判H19(ワ)35324 「プラバスタチンラクトン等を含む組成物」事件

 裁判所は、次のように定立し、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム特許について「製法限定説」を採ることを示した。
 『… ところで,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づき定めなければならない(特許法70条1項)ことから,物の発明について,特許請求の範囲に,当該物の製造方法を記載しなくても物として特定することが可能であるにもかかわらず,あえて物の製造方法が記載されている場合には,当該製造方法の記載を除外して当該特許発明の技術的範囲を解釈することは相当でないと解される。
 他方で,一定の化学物質等のように,物の構成を特定して具体的に記載することが困難であり,当該物の製造方法によって,特許請求の範囲に記載した物を特定せざるを得ない場合があり得ることは,技術上否定できず,そのような場合には,当該特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定して解釈すべき必然性はないと解される。
 したがって,物の発明について,特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合には,原則として,「物の発明」であるからといって,特許請求の範囲に記載された当該物の製造方法の記載を除外すべきではなく,当該特許発明の技術的範囲は,当該製造方法によって製造された物に限られると解すべきであって,物の構成を記載して当該物を特定することが困難であり,当該物の製造方法によって,特許請求の範囲に記載した物を特定せざるを得ないなどの特段の事情がある場合に限り,当該製造方法とは異なる製造方法により製造されたが物としては同一であると認められる物も,当該特許発明の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。』
 次に、「特段の事情」があるか否かについて検討し,『本件特許の請求項1に記載された「物」である「プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」の構成は,その記載自体によって物質的に特定されており,物としての特定をするために,その製造方法を記載せざるを得ないとは認められない。』として、特段の事情を認めなかった。
 そして、製法について検討し、『被告製品は,原告工程a)を充足するとは認められないから,その余の点を判断するまでもなく,被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するとは認められない。』として原告の請求を棄却した。
 南条雅裕「プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利解釈」パテント55巻5号(2002)

2007(H19).11.27 大阪地判H18(ワ)11880 「遠赤外線放射体」事件

 特許法36条2項2号(明確性要件)違反として同法104条の3により特許権者の請求が棄却された。
『・・・ 特許請求の範囲に「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」と記載されていても,それがどのような大きさの粒子を指すかは不明 ・・・』
 判例研究 平島竜太(Law & Technology No.40,p64)
 実施可能性要件(36条4項)違反の事例:・大阪地判H18.7.20(L&T No.34,p69),
 ・大阪地判H16.9.27(L&T No.26,p99)
 サポート要件(36条6項1号)違反の事例:  ・大阪地判H20.3.3(H18(ワ)6162号)

2007(H19).4.19 大阪地判H17(ワ)12207 ゴーグル事件

 侵害品譲渡数量の99%について特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」があるとされた事例。この場合、特許法102条1項ただし書によって特許権者によって販売できないと認定された分について、同条3項に基づく損害額の請求をできないとされた。
 本判決同様にマーケットシェアを考慮した事例:
  ・東京高判H11.6.15(判例時報No.1679,p96),・東京地判H12.6.23,・東京地判H12.3.24
 権利者製品と侵害品の価格差を考慮した事例:・知財高判18.9.25
 同項ただし書とは別問題で論じている事例:
  ・大阪地判H12.9.26, ・東京地判H15.3.26(判例時報No.1837,p101)

2005(H17).9.13 東京地判H16(ワ)14321 特許権譲渡代金請求事件

 共同発明者の決定とその判断基準。棄却(控訴)判例時報No.1916,p133
  ・東高判 S51.4.27 麻雀ルールパチンコ事件
  ・東高判 S60.8.15 プラスチック金型製造用プレス事件
  ・東高判 H3.12.24 自動ボイルエビ成形装置事件
  ・東高判 2003(H15).3.25 建築用内部足場事件

2005(H17).6.17 東京地判H16(ワ)4339 「低周波治療器」事件

 被告製品を分解して解析しても、それだけでは発明の内容を全部知ることができないとして、出願前に公然実施されていたとはいえず,新規性を欠くとはいえないとされた事例。(判例時報No.1920,p120)

2005(H17).4.28 名古屋地判H16(ワ)1307 「移動装置」事件

 先使用権援用の可否について。先使用権者たる製造業者の利益保護のためには,販売業者による同製品の販売行為が特許権の侵害にならないという効果を与えれば足りるのであって,製造業者が先使用権を有しているという一事をもって,販売業者にも製造業者と同一の先使用権を認めるのは,販売業者に過大な権利を与えるものとして,これまた,先使用権制度の趣旨に反する。(判例時報No.1917,p142)

2005(H17).4.8 東京地判H15(ワ)3552 「水晶振動子」事件

 特許請求の範囲に記載された2以上の発明に係るものについては,発明ごとに無効審判を請求することができる(昭和62年法律第27号による改正前の特許法123条1項)。よって,1つの発明について要旨変更によって出願日が繰り下がった結果進歩性欠如の無効理由があるときは,当該特許についてのみ無効とすべきものであり,他方の特許出願について出願日が繰り下がることはないと解すべきである。(判例時報No.1903,p127)

2004(H16).12.8 東京地判H16(ワ)8557 使用済み品の再利用

 物の生産の方法の特許実施品に対し、その方法を再度使用する行為との関係について。(判例時報No.1889,p111)

2004(H16). 8.17 東京地判H16(ワ)9208 「切削オーバーレイ工法」事件

 単純方法の発明の実施行為。特許法100条は,特許権を侵害する者等に対し侵害の停止又は予防を請求することを認めているが,同条にいう特許権を侵害する者又は侵害をするおそれがある者とは,自ら特許発明の実施(同法2条3項)又は同法101条所定の行為を行う者又はそのおそれがある者をいい,それ以外の教唆又は幇助する者を含まない。

2004(H16).7.28 東京地判H15(ネ)4920 超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム

 被告2社は三井化学(原告:代理人ユアサハラ)に各30億円ずつ支払えとの判決。

2004(H16).4.28 東京地判H15(ワ)26297 通常実施権設定契約の協議義務

 特許権の通常実施権の設定を受けた者が,当然に実施許諾を受けた特許の有効性を争うことができないとすると,無効理由を含む特許につき実施料の支払等の不利益を甘受しなければならなくなる。したがって,通常実施権者であっても,特許の有効性を争わない等の格別の合意がされない限り,実施許諾の基礎となった特許の有効性を争うことが許される。この理は,実施許諾の基礎となった特許について,第三者から無効審判請求をされた場合であっても同様であり,特許権者が無効理由を解消させる目的で行う訂正請求ないし訂正審判請求をする際,通常実施権者は,特許の有効性を争わない等の格別の合意をした場合でない限り,特許権者に対して,訂正審判請求等の承諾を与えないことは,当然に許される。(判例時報No.1866,p134)

2004(H16).4.23 東京地判H14(ワ)6035 「プリント基板用治具に用いるクリップ」

 特許法101条2号の「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たらないとされた事例。(判例時報No.1892,p89)

2004(H16).4.23 東京地判H15(ワ)9215 「弾性体」の解釈

 分割出願によって特許されたものの特許請求の範囲の解釈は、分割出願の手続要件に違反しないように限定的に解釈すべきとされた事例。

2004(H16).1.30 東京地判H13(ワ)17772 職務発明の対価

 日亜化学工業(被告)は鈴木修教授(原告)に職務発明の対価として200億円支払えとの判決。

2003(H15).12.26 東京地判H14(ワ)3237 液体充填機ノズル事件第一審

 「ノズルを組み込んだ液体充填機」の製造・販売が「液体充填機のノズル」に係る特許権の侵害にあたる場合に,その損害額の算定に「ノズルを組み込んだ液体充填機」の販売額を基礎として、ノズル部分の液体充填機に対する寄与率が考慮された事例。(判例時報No.1851,p138)
 同様な従来の一般的算定方法として、東京高判H11.06.15(判例時報No.1697,p96)、東京地判H14.3.19 H11(ワ)23945 (法102条1項に基づく多額 74.1668億円の損害賠償を認容した事例。パチスロ機事件)がある。

2003(H15).2.6 東京地判H13(ワ)21278 リガンド分子の安定複合体事件

 特許権に専用実施権が設定されている場合には,設定行為により専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については,差止請求権を行使することができるのは専用実施権者に限られ,特許権者は差止請求権を行使することができないと解するのが相当である。

2002(H14).1.28 東京地判H12(ワ)27714 プロダクト・バイ・プロセス

 「本件発明は物の発明であるところ,構成要件Fの記載は,製造方法に係る記載部分であるから,発明の技術的範囲を解釈するに当たり,同構成要件によって限定すべきではない旨主張する。しかし,原告の同主張は,以下のとおりの理由から採用できない。」として「特段の事情」を考慮した。

2002(H14).4.25 東京地判H13(ワ)14954 「生海苔の異物分離除去装置」事件

 特許法102条1項にいう「特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物」とは,侵害された特許権に係る特許発明の実施品であることを要すると解すべきである。なぜなら,特許発明の実施品でないとすれば,そのような製品は侵害品と性能・効用において同一の製品と評価することができず,また,権利者以外の第三者も自由に販売できるものであるから,市場において侵害品と同等の物として補完関係に立つということができず,この規定を適用する前提を欠くからである。
「競合品であれば特許の実施品でなくてもよい」とする判決例:
  ・東京高裁1999(H11).6.15第6民事部判決

2000(H12).8.31 東京地判H8(ワ)16782 「写ルンです」(富士写真フィルム)

 原告が日本国内において販売した原告製品について、これを一般消費者が使用後に現像所に持ち込んだものを購入し、フィルムを入れ替えるなどの作業を行わせたものを被告製品として販売している被告A、および原告が韓国において販売した原告製品について、これを韓国の一般消費者が使用後に現像所に持ち込んだものを韓国の詰替業者が購入してフィルムを入れ替えるなどの作業を行わせたものを、その詰替業者から輸入して、販売している被告Bに対して、原告が当該製品の販売の差し止めを請求した。
 これに対して裁判所は、「(i)原則として譲渡により特許権は消尽するが、特許製品がその効用を終えた後においては、特許権者は、当該特許製品について特許権を行使することが許される。(ii)特許発明の本質的部分を構成する主要な部材を新たな部材に交換した場合にも、特許権者は、当該製品について特許権を行使することが許される。主要な部材を交換した場合は、当初の製品と同一の製品ということができないからである。」との理由で、原告の主張を認めた。

1999(H07).12.22 名古屋地判H07(ワ)4290 「片面段ボールの製造装置」事件

 特許法102条2項所定の「侵害により利益を受けているとき」における「利益」とは、特許権者が現実に特許権を実施しており、かつ、設備投資や従業員の雇用を新たに必要としない状態で製造、実施等が可能な範囲内では、侵害行為者の製品の売上額から、その製造、実施等のための変動経費のみを控除した額(限界利益)をいうものと解するのが相当である。
限界利益説の判決例:
  ・名古屋地裁2005(H17).4.28(H16(ワ)1307号)
 特許法102条2項にいう「利益」とは,侵害者が特許権侵害に係る製品の製造,販売のみに要する専用の設備を新たに設置し,あるいは従業員を雇い入れたといった例外的な事情がない限り,侵害に係る製品の売上額から,原材料の仕入れ,加工,保管,運送等に要した経費のうち当該製品の製造,販売のみのために要した変動費を控除した限界利益をいう(もっとも,必ずしも財務会計上の限界利益と一致するものではない。)と解するのが相当である。
  ・東京地裁2000(H12).6.23(H08(ワ)17460号)採決器事件
 利益 =(売上単価 - 売上原価 - 変動経費)x 売上量 x 市場独占率{原告製品を販売できなかった事情を考慮}限界利益説、東京地裁平成7年10月30日判決以降。

H3.4.19 東京地裁 S58(ワ)12677 Ball Spline Case

 「無限摺動用ボールスプライン軸受」事件の東京地裁判決。均等(置換容易性)が認められず、原告敗訴。
 
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