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特許-高等裁判所-


2019(R1).6.7 知財高判 H30(ネ)10063 二酸化炭素含有粘性組成物事件

 特許法102条2項の規定における「利益の額」は、いわゆる限界利益の額であるとし、控除すべき経費及び推定覆滅事由についても一定の判断基準・考慮事情を示した事例。本規定は、推定規定であるから,侵害者の側で,侵害者が得た利益の一部又は全部について,特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には,その限度で上記推定は覆滅される。(判例時報No.2430)
 NAKAMURA & PARTNERS 情報提供 2019年10月02日

2018(H30).4.13 知財高判 H28(ケ)10182, 10184 ピリミジン誘導体事件

 「特許権消滅後の審決取消訴訟の訴えの利益について、特許無効審判の請求人適格に着目し、平成26年法改正前の特許法が適用される場合においては、「特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は、特許権消滅後であっても、特許権の存続期間中にされた行為について、何人に対しても、損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り、失われることはない」。
 「引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明と認定することはできない」。
 知財高裁詳報 知財高裁大合議判決〔ピリミジン誘導体事件〕 L&T No.80 2018/7 p.88-97
 知財高裁大合議事件 H28(行ケ)10182、10184 審決取消請求事件

2018(H30).10.17 知財高判 H29(行ケ)10232 いきなりステーキ事件

 立食形式のステーキを提供する際に,客を案内するテーブル番号を記した札を用意したうえで,肉を計量する機械が客の要望に応じてカットした肉の量と客のテーブル番号を記載したシールを出力し,これと札とを照合することで,他の客の肉との混同を防ぐという効果を奏するというステーキの提供システム。裁判所は特許庁の異議決定を取消し、「ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含む」ことを問題としつつ,それに付加された札,計量機,シール(印し)によって発明の技術的課題の解決に寄与する効果が発揮されていることを理由に発明該当性を肯定した。
 特許庁取消決定:「物の本来の機能論」は単独で発明該当性を否定する理屈ではなく、「特許発明の技術的意義」が「経済活動それ自体に向けられている」ことを前提に、そこに種々、物をくっつけたところで、個々の物の本来の機能の利用態様が示されていただけでは、そもそも発明に該当しないものが発明に転化しない。
 ⇒ 発明該当性否定の補助理論としての「物の本来の機能論」
 裁判所:物が用いられることが示されている場合、それが「効果」(本件では「他のお客様の肉との混同を防止するという効果」)を奏するものであり、その「効果」が「特許発明の課題解決に直接寄与する」ものであるならば、発明該当性が認められる。その際、当該「効果」が「物が持っている本来の機能」であるか否かは吟味しない。
 田村善之「特許適格対象の画定における物の本来の機能論の意義」パテント74巻11号(別冊26号)(2021年)
 中山一郎「人間の精神活動、人為的取決めと発明」特許研究70号21頁(2020年)
 知財高判令和2.6.18令和元年(行ケ)10110[電子記録債権の決済方法,および債権管理サーバ]
 自然法則の利用に該当しないものに,通常の用法を加えても,特許適格性があるものに変容するわけではない。➝ 物の本来の機能論

2016(H28).3.25 知財高判 H27年(ネ)10014 「マキサカルシトール」事件

 均等の第1要件(非本質的部分)と第5要件(特段の事情)の考え方について。前者については、置換されたイ号物件が特許発明の技術的思想の範囲内にあるかによって判断する説(技術的思想(同一)説)を採用し、後者については、
 特許請求の範囲に記載された構成と実質的に同一なものとして,出願時に当業者が容易に想到することのできるクレームの範囲外の他の構成があり,したがって,出願人も出願時に当該他の構成を容易に想到することができたとしても,そのことのみを理由として,出願人がクレームに当該他の構成を記載しなかったことが「特段の事情」に当たるものということはできないが、出願時に,当該他の構成を,クレームに記載された構成中の異なる部分に代替するものとして認識していたものと客観的,外形的にみて認められるとき,「特段の事情」に当たると判示した。

2013(H25).2.1 知財高裁 H24年(ネ)10015 「ごみ貯蔵機器事件」事件

 『特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。このように,特許法102条2項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であって,その効果も推定にすぎないことからすれば,同項を適用するための要件を,殊更厳格なものとする合理的な理由はないというべきである。
したがって,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり,特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在するなどの諸事情は,推定された損害額を覆滅する事情として考慮されるとするのが相当である。そして,後に述べるとおり,特許法102条2項の適用に当たり,特許権者において,当該特許発明を実施していることを要件とするものではないというべきである。』
とし、原審(102条1項での賠償額が2100万円)を変更し、支払額を約1億4800万円に増額した。

2010(H22).3.24 知財高裁 H20年(ネ)10085 「JAddressサービス」事件

 被控訴人は、被控訴人方法を使用しているのは、パソコンのユーザーであって、被控訴人ではないとして争った。これに対して控訴人は、道具理論及び共同直接侵害の理論により被控訴人が直接侵害者であると主張した。
 『「アクセス」が「インターネットよりなるコンピュータネットワークを介したクライアント」による「サーバーシステムの情報ページ」に対するものであることは構成要件Aの記載自体から明らかであり,本件発明がそのような「アクセス」を提供する方法の発明であることも明らかである。そして,提供される「アクセス方法」が,構成要件BないしFにおいて特定された段階を備えるものであることが特定されており,これが「ディレクトリサーバー」を基点とする情報処理の各段階を特定するものであることは,特許請求の範囲の記載から容易に理解することができるのであり,アクセスを提供する主体として,本件発明における「ディレクトリサーバー」に相当するサーバーの管理者が想定されていることについても同様である。
 齋藤浩貴「ネットワーク利用特許の実施行為と侵害の主体」知財管理 61(1), 5-16, 2011-01
 松田俊治「複数主体が関与する物の発明について特許権の侵害を肯定した事例」パテント2009 Vol.62 No.8
 潮海久雄「分担された実施行為に対する特許間接侵害規定の適用と問題点」特許研究,No.41,2006.3,p.5-17

2009(H21).6.29 知財高裁 H21年(ネ)10006 「ゴルフクラブ」事件

 中間判決。均等が認められた事例。
 「縫合材であること」は,本件発明の課題解決のための手段を基礎づける技術的思想の中核的,特徴的な部分であると解することはできない。 ・・・ 本件発明において貫通穴に通す部材が縫合材であることは,本件発明の本質的部分であるとは認められない。(判例時報No.2077)
 塚原朋一「知財高裁における均等侵害論のルネッサンス」知財管理 60(12), 1777, 2011
 森修一郎「均等論の要件「特許発明の本質的部分」について,中空ゴルフクラブヘッド事件を題材に」パテント2010 Vol.63 No.10
 田村善之「均等論における本質的部分の要件の意義(1)」知的財産法政策学研究 Vol.21(2008)

2008(H20).6.24 知財高裁 H19年(行ケ)10369 双方向歯科治療ネットワーク事件

 人の行為により実現される要素が含まれ,人の精神活動が必要となる発明であっても,人の精神活動を支援するための技術的手段を提供するものであり,特許法2条1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとして,同項の「発明」に該当しないとした審決が取り消された。
 『 ・・・ 人の精神活動それ自体は,「発明」ではなく,特許の対象とならないといえる。しかしながら,精神活動が含まれている,又は精神活動に関連するという理由のみで,「発明」に当たらないということもできない。けだし,どのような技術的手段であっても,人により生み出され,精神活動を含む人の活動に役立ち,これを助け,又はこれに置き換わる手段を提供するものであり,人の活動と必ず何らかの関連性を有するからである。
 ・・・ 他方,人の精神活動による行為が含まれている,又は精神活動に関連する場合であっても,発明の本質が,人の精神活動を支援する,又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである場合は,「発明」に当たらないとしてこれを特許の対象から排除すべきものではないということができる。』(判例時報No.2026)
同様な判決:2008(H20).8.26 知財高裁 H20(行ケ)10001 「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」(特願2003-154827号
発明性について判断した判決: ① 2006(H18).9.26 知財高裁 H17(行ケ)10698,
② 2007(H19).10.31 知財高裁 H19(行ケ)10056,③ 2008(H20).2.29 知財高裁 H19(行ケ)10239

2008(H20).5.30 知財高裁 H18年(行ケ)10563 ソルダーレジスト(除くクレーム)事件

 判決要旨は次のとおり:① 訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということガできる。
② いわゆる「除くフレーム」とする訂正が,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。
③ 訂正における登録商標は,先願明細書に基つく特許出願時において当該登録商標によって特定されるすべての製品を含むものであるということができるから,当該登録商標によつて特定された物が技術的に明確でないとはいえない。
④ いわゆる「除くクレーム」とする訂正において,登録商標の記載を使用して除外部分を表示したことが,特許法施行規則が定める「当該登録商標を使用しなければ当該物を表示することができない場合」における登録商標の使用である。
知財高裁詳報(Law & Technology No.40,p84)

2008(H20).2.29 知財高裁 H19(行ケ)10239 「ビットの集まりの短縮表現生成方法」事件

 ハッシュ法は数学的な課題を有し,数字上の計算式(ハッシュ関数)として表現可能なものであり,しかも,同装置は既存の演算装置を用いて上記数学的アルゴリズムを演算することを内容とするものにとどまるから,本願発明の実質は数学的なアルゴリズムそのものというほかなく,これをもって,特許法2条1項の定める「発明」に該当するということはできない旨判示。(判例時報No.2012)
前審:不服2004-13406号事件,H11年特願295775、特開2000-122538〕

2007(H19).12.28 知財高裁 H18(行ケ)10426 データム機能付クランプ装置事件

 結論の中で、特許庁の審判合議体が、請求項基準説を採用している思われる点について適切な措置であると評価できるとある。(判例時報No.1779,p89)
 複数の請求項について訂正審判が請求された場合における訂正の許否については,
①「一体説」(改善多項制導入前と同様に訂正審判請求全体を一体のものとして,一部の請求項に係る訂正につき特許法所定の要件を満たさない点があれば,他の請求項に係る訂正について要件充足の有無を判断するまでもなく,請求に係るすべての請求項についての訂正を許さないものとすべき)と,
②「請求項基準説」(請求項ごとに訂正が特許法所定の要件を満たすものかどうか判断した上で,訂正審判請求のうち,要件を満たさない請求項に係る部分のみについて訂正を許さないものとし,要件を満たす請求項に係る部分については訂正を許すものとすべき)
に分かれていた。
  → 2008(H20).7.10 第一小法廷判決H19(行ヒ)318「発光ダイオードモジュール」事件
2007(H19).7.23 知財高裁 H19(行ケ)10099 編み機およびヤーン切替え装置事件(判例時報No.1998,p110)

2007(H19).6.20 知財高裁 H19(行ケ)10081 コンクリート製水路壁面改良工事事件

 特許無効審判(請求項1,2,4の無効請求)中、特許権者は請求項4の訂正請求をし、①訂正を認める、②請求項1,2の特許を無効にする、③請求項4についての審判請求は認められない、との審決があった。特許権者は審決②についての取消訴訟提起したが、請求人は④について取消訴訟提起しなかったため、訂正は確定。裁判所は、審決②を取り消し、審判に差し戻した。(特許庁での再審理の結果、請求項1,2の無効確定【無効2006-080039】)
 さらに、「2以上の請求項に係る無効審判請求においては,無効理由の存否は請求項ごとに独立して判断されるのであり,個々の請求項ごとの審判が同時に進行しているものとして考えるのが,無効審判制度の趣旨に沿うものである。そうすると,無効審判の審決において認められた訂正の効力についても,個々の請求項ごとに生ずる。」とし、特許法134条の2第4項のみなし取下げの規定は,上記のような無効審判制度を前提としているから,その効果も請求項ごとに生じると解するのが相当であることを示した。(判例時報No.1997,p119)
論文「特許無効審決中の訂正請求に係る判断とみなし取下げとの関係」(弁護士川田篤,PatentVol.60 No.11,p24)

2007(H19).5.30 知財高裁 H18(ネ)10077 「インクジェット記録装置用インクタンク」事件

 分割の要件。「本件原出願の当初明細書等のいかなる部分を参酌しても,上記の構成を必須の構成要件とはしない技術思想(上位概念たる技術思想)は,一切開示されていないと解するのが相当である。・・・ したがって,本件分割出願は,分割要件を欠く不適法なものであるから,その出願日は本件原出願の時まで遡及せず,現実の出願日となる。」
判例研究「分割出願における実体的要件」(青山耕三,PatentVol.61 No.7,p90)

2007(H19).1.30 知財高裁 H18(行ケ)10138「反射偏光子」事件

 引用発明の一体となっている構成の中から本願発明に類似する部分のみ取り上げて、これを一致点として認定することは、ひとまとまりの技術的思想として引用発明にない構成を認定することになり許されないとして審決を取り消した。

2006(H18).12.20 知財高裁 H18(ネ)10056 「電話の通話制御システム」事件

 特許出願の手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならないと規定され(特許法17条の2第3項)、審査基準によれば、当初明細書等から自明な事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内であるとされてる。
審査基準は、周知技術というだけでは補正は許されず、許されるのは周知技術が自明な事項と言える場合に限られると記載されている。この判断に関する判決。
 『明細書又は図面の記載から見て,ある事項が自明であるというためには,ある周知技術を前提とすれば,当業者が,明細書又は図面の記載から,当該事項を容易に理解認識できるというだけでなく,たとえ周知技術であろうと,明細書又は図面の記載を,当該技術と結び付けて理解しようとするための契機(示唆)が必要であると解すべきである。しかるところ,テレホンカードシステムは,電話利用のために,磁気カード読み取り機能を有する専用の公衆電話機しか使用できないシステムであるから,「前払い電話通話のためいずれの電話機でも使用できるようにした方法が提供される」という効果を奏する本件出願当初明細書記載の発明とテレホンカードシステムとの間には本質的な相違があるというべきであり,たとえ,両者とも前払い方式の課金システムを伴うものであっても,そのことのみによって,かかる示唆があるということはできない。』とした。

2006(H18).11.29 知財高裁 H18(行ケ)10227 「シワ形成抑制剤」事件

 本願発明の請求項1は、「アスナロ又はその抽出物を有効成分とするシワ形成抑制剤」であり、引用公報には、アスナロ抽出物を有効成分とする美白化粧科組成物が記載されていた。審決は、本願発明は引用発明と同一発明であるから新規性がないと判断した。
 判決は ,当業者が,本願出願当時,引用発明の「美白化粧料組成物」につき,「シワ」についても効果があると認識することができたとは認められず,本願発明の「シワ形成抑制」という用途は,引用発明の「美白化粧料組成物」とは異なる新たな用途を提供したということができる、として審決を取り消した。

2006(H18).9.28 知財高裁 H18(ネ)10007 「図形表示装置及び方法」事件

 特許発明の特許請求の範囲の文言が一義的に明確なものであるか否かにかかわらず,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべきとした。
消尽についての判断:東京高裁 H16(ネ)1563 レンズ付きフィルム事件,東京高裁 H14(行ケ)539 人工乳首事件

2006(H18).04.27 知財高裁 H17(行ケ)10223「酸性水中油型乳化調味料」事件

 「○○○に用いる」という特許請求の範囲の記載が「物」の発明の構成を限定する意義を有しないとされる一方,容易想到という特許庁の判断が覆された事例。
「○○○方式に使用される」との記載:
      2006(H18).08.31 知財高裁 H17(行ケ)10665「静電潜像現像用トナー」事件

2006(H18).2.18 知財高裁 H17(行ケ)10205 審決取消請求事件

 実施可能要件不備。C12H22O11・3HOの分子式を有する結晶ラクチュロース三水和物(森永乳業)

2006(H18).1.31 知財高裁 2005(H17)(ネ)10021 インクカートリッジリサイクル事件

 使用済みのインクカートリッジを回収し、インクを再充填して販売していたリサイクル・アシスト社に対し、キャノン社が提訴した特許権侵害訴訟の控訴審(原判決の取り消し/侵害)。上告審あり。
特許権が消尽しない場合について、
① 当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型),又は,
② 当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)
とし、本件リサイクルは、第2類型に該当するとした。
判決研究 名大教授 鈴木将文 L&T No.32 2006/7 p.71-85
「環境保全の理念と特許法の理念との調和について」増井 守 Patent Vol.59 No.10 p.99-103)

2005(H17).10.19 東京高裁 H17(行ケ)10013 「体重のモジュレーター」事件

 サポート要件。遺伝子に関する発明は,有用性が明らかにされて初めて産業上利用できる発明として認めるべきものであるのに,明細書の発明の詳細な説明に記載された有用性の明らかな核酸分子のみならず,有用性を有しない核酸分子をも包含している本願発明の特許請求の範囲は,発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものを記載していることとなり,特許法36条6項1号の記載要件を満たしていない。

2005(H17).9.30 知財高裁 H17(ネ)10040 「一太郎」侵害事件

 間接侵害(特許法101条2号、4号)の要件の判断(ジャストシステム vs. 松下電器)
1. 文書及び図形作成ソフトウエアの製造・譲渡等の行為について「情報処理装置」に係る発明について特許法101条2号の間接侵害(物の発明についての間接侵害)ガ成立する。
2. 特許法101条4号にいう「その方法の使用に用いる物」の意義
3. 文書及び図形作成ソフトウエアの製造・譲渡等の行為ガ「情報処理方法」に係る発明について特許法101条4号の間接侵害(方法の発明についての間接侵害)に該当しない。
4.「情報処理装置及び情報処理方法」に係る発明ガ進歩性を欠き,同発明に係る特許は特許法29条2項に違反してされたものであって特許無効審判により無効にされるペきものであるとして,特許権者は,文書及び図形作成ソフトウエアの製造・譲渡等の行為をしている者に対し,同法104条の3第1項に従い,同特許権を行使することガできない。
判決研究 京大助教授 愛知靖之 Law & Technology No.31 2006/4 p.64-71

2005(H17).9.22 知財高裁 H17(行ケ)10316 「自動車用窓ガラス」事件

 特許庁が異議2003-72297号事件についてした決定が取り消された。進歩性あり。

2005(H17).9.22 知財高裁 H17(ネ)10006 「液体充填装置におけるノズル」事件

 損害賠償請求事件。被告ノズルの液体充填機に対する寄与率が約10%と認められた。

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2005(H17).01.27 知財高裁 H16(ネ)1664/1589 チッソ v. メルク

 「からなる」の解釈。「AとBからなる」との文言は,AとB以外の第三成分を排除する趣旨で使用するのが通常であるから,本件明細書の特許請求の範囲や発明の詳細な説明にAとB以外の第三成分を明示的に加える旨の記載があるなどの特段の事情が認められない限り,「AとBからなる」との文言が「AとBを用いている」との文言と同様にAとB以外の第三成分を排除する意味合いがないと解することはできない。
cf.・2004(H16).2.25 東京地裁 H14(ワ)16268
「『実質的に・・・から成る』の意義について,・・・のうち,明細書中に具体的な記載がある元素,及び明細書の具体的な記載に基づいて当業者が容易に想到できる元素を含有させることを許容すべきであるが,その範囲を超えた,合金の特性に影響を与える元素を含有させることを許容する趣旨と解すべきではない」として、均等否定。

2005(H17).1.25 東京高裁 H16(ネ)1563 「レンズ付きフィルム」事件

 最高裁平成3年3月8日第一小法廷判決を引用。また、「消尽」及び「権利濫用」の主張が時機に後れた攻撃防御方法の提出であり,控訴人らに少なくとも重大な過失ありと認められた。
消尽についての判断:東京地裁H8(ワ)16782号,東京地裁H11年(ヨ)22179号(判例時報No.1712,p175),東京高裁H13年(ネ)959号(判例時報No.1779,p89),知財高裁 H17(ネ)10021など

2004(H16).1.29 東京高裁 H14(ネ)6451 職務発明(日立製作所)

 日立製作所側に約3500万円の支払いを命じた第1審東京地裁判決を取り消し、控訴人(米沢氏)がかかわった三つの発明による同社の利益は、特許のライセンス料など約11億7970万円と算定。米沢氏の貢献度を14%と認定した上で、発明の対価約1億6510万円から、在職時に支払われた報奨金約230万円を差し引いた約1億6280万円の支払いを命じた。

2003(H15).10.8 東京高裁 H14(行ケ)539 国内優先権の主張(人工乳首事件)

 後の出願の明細書及び図面に新たな実施例を加えることにより,後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨とする技術的事項が,先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることとなる場合には,その超えた部分について優先権主張の効果が認められない。

2002(H14).11.22 大阪高裁 H13(ネ)3840 エアゾル製剤事件

 作用効果不奏功の抗弁。
「・・・通常,当該特定の構成要件に対応して特定の作用効果が生じることは客観的に定まったことがらであり,出願者がこのようなうちから明示的に選別した明細書記載の作用効果が生じることも客観的に定まったことがらであるから,対象製品が明細書に記載された作用効果を生じないことは,当該作用効果と結びつけられた特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有していないことを意味し,又は,特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有しながら同時に当該作用効果の発生を阻害する別個の構成要素を有することを意味する。
したがって,対象製品が特許発明の技術的範囲に属しないことの理由として明細書に記載された作用効果を生じないことを主張するだけでは不十分であって,その結果,当該作用効果と結びつけられた特許発明の特定の構成要件の一部又は全部を備えないこと,又は,特許発明の構成要件の一部又は全部を構成として有しながら同時に当該作用効果の発生を阻害する別個の構成要素を有することを主張する必要がある。」

2002(H14).10.31 東京高裁 H12(行ケ)170 動力伝達用チェーン

 「複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正の許否の判断をすべきか否か」について、「本件訂正請求は,それぞれ請求項ごとに別個独立のものとして理解し得るものであり,本件において請求項ごとに訂正の許否を判断するのに特段の支障は認められない。」とした。(判時1821.118)
cf. 最一判S55.5.1(判例時報No.967,p49)「請求の一部についてのみ訂正を許す審判をすることはできない旨を判示。」

2002(H14).10.31 東京高裁 H12(ネ)2645 カルボン酸アミド誘導体の製造法

 特許法104条の生産方法の推定。共同不法行為が認められた。
製造方法の主張立証が時機に後れた防御方法であると判断された。(判時1821.118)

2001(H13).12.27 東京高裁 H11(行ケ)219 小電力無線機を用いた長距離単向通信方式

 請求棄却。被告が予備的に主張しようとしているのは,審判段階ですでに取り上げられていた公知事実を前提に,そこから結論を導き出すための根拠とする事由を変更したにすぎない,本訴において,引用刊行物1の新たな把握に基づいて審決の判断の当否の認定判断をしたとしても,必ずしも,原告に保障されている,専門行政 庁たる特許庁の審理判断を受ける利益が害されるとはいえず,最大判昭51.3.10 の趣旨に反するともいえない,と判示した。

2002(H14).4.11 東京高裁 H12(行ケ)65 医療行為と産業上利用

 「人間を診断する方法」(医療行為)は、「産業」(特許法29条2項柱書)に該当しない。(判時1828.99)

1996(H08).3.29 大阪高裁 H6(ネ)3292 Met-tPA事件

 アミノ酸配列のうち245位を特許発明のものとは別のアミノ酸に置換したものに均等を認めた。

H06.2.3 東京高裁 H03(ネ)1627 Ball Spline Case

 「無限摺動用ボールスプライン軸受」事件の高裁判決(控訴人勝訴)。→最高裁判決

H2.7.19 東京高裁 H01(行ケ)123 パリ優先権の主張と29条の2

 本件出願日後に出願された先願を、出願人がその特許出願を取り下げたにもかかわらず、優先権を主張してなされた出願であることを理由に「当該特許出願の日前の他の特許出願」(29条の2)として取り上げ、本件出願を拒絶したのは誤り。

S57.6.30 東京高裁 S54(ネ)825 ジピリダモールの製造方法

 特許法第104条の規定の推定が働く場合には、「被告がその特許権を侵害していること」になるのであるから、この推定の結果を覆すためには、当然、被告としては、単に自らの実施している方法を開示するだけでは不十分であって、更に、その方法が特許発明の方法と異なる方法であって、特許権を侵害するものではないことまで主張し、かつ、立証しなければならない。

 
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