外国における商標の保護
外国で商標を使用して商品を販売したり、サービスを提供するためには、各国ごとにその商標についての商標権を取得しなければなりません。
各国で商標登録を取得するためには、各国ごとにその国の特許庁に商標登録出願手続を行う方法の他に、わが国で2000年(平成12年)から受付が始まったマドリッド協定議定書による標章の国際登録や、欧州共同体商標(CTM)の制度を利用する方法もあります。
1. マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願(マドプロ出願)
マドリッド協定議定書に基づく商標の登録出願のことを、単に国際登録出願、又はマドプロ出願といいます。スイスのジュネーブに本部がある世界知的所有権機関(WIPO)が国際事務局として国際登録出願(登録後は国際登録)を管理しています。
国際登録は、単に国際事務局が管理する登録簿に記録されたことを意味し、直ちにすべての加盟国での保護が約束されるわけではありません。指定した国の官庁に指定があった旨の通知が送られ、各国ではそれぞれの法律(制度)に基づいて審査され、その結果は出願人に通知されます。
直接保護を求める国に出願するか、マドリッド制度を利用して国際登録をするかどうかは出願人の選択となりますが、通常、国際登録出願を利用することで商標を国際的に一括して管理でき、費用全体を抑えることができます。
次のような商標は国際登録を考えるべきでしょう。
● |
複数のマドリッド制度の加盟国で商標の保護が欲しいとき
|
● |
海外で使用する商標と全く同じ商標の出願又は登録(基礎出願又は基礎登録)がわが国特許庁に出願又は登録されているとき。
|
<マドプロ出願の留意点>
● |
基礎出願又は基礎登録が存在すること
わが国の商標登録出願又は商標登録が存在することが必要です。これは、基礎出願又は基礎登録となります。
|
● |
商標
基礎出願(登録)の商標が片仮名文字を含まないこと(諸外国では、片仮名文字は図形とみなされます。)
|
● |
指定商品・役務
基礎出願(登録)の指定商品(役務)に外国で保護を受けようとする商品(役務)が含まれること
|
● |
セントラルアタック
国際登録の日から5年経過すれば、国際登録は基礎となる出願又は登録から独立したものとなります。逆に、国際登録の日から5年間は基礎となる出願又は登録に従属しますので、基礎となる出願が最終的に拒絶されたり、登録が消滅した場合には、国際登録も取り消されます。ただし、各指定国への国内出願に変更することが可能です。
このため、出願は、基礎出願よる国際出願よりも基礎登録による国際出願のほうが安全です。
|
国際登録出願にかかる料金
国際登録出願の料金は3種類の公的費用(Official Fees)と事務所手数料(Attorney Fee)がかかります。3種類の公的費用は基本手数料と特許庁手数料と個別・付加手数料です。基本手数料は国際事務局の手数料で、653CHF(スイスフラン/白黒見本の場合)又は903CHF(カラー見本の場合)です。わが国特許庁の手数料は9,000円です。個別・付加手数料は、登録する国で異なる額となます。これらの料金は、Fee Calculation(英語)で計算できます。
- マドプロ出願についてのお問い合わせはこちらから ⇒
↑ページトップへ
2. 各国への直接出願
各国の代理人を通じて各国の特許庁へ商標登録出願する方法です。
マドプロ非加盟国にも出願することができます。パリ条約加盟国に出願する場合には、わが国の出願日から6か月以内であれば、パリ条約等に基づく優先権を主張することができます。適法に優先権を主張すれば、第2国出願(外国出願)が第1国出願の日(日本での出願日)に行われたものとして扱われます。出願人は、第1国出願から第2国出願までの間になされた行為、例えば、他人による類似商標の出願、により不利な取扱を受けず、第3者のいかなる権利等をも生じさせないとする利益を享受することができます。
<メリット>
● |
マドリッドプロトコルに加盟していない国(マドプロ非加盟国)に出願できます。
|
● |
出願対象国が少数でマドプロ出願のルートを利用する必要のない場合に利用できます。
|
● |
各国毎に現地の代理人を通じて出願するので、現地での最新情報が得られたり、商標の保護について迅速な対応が期待できます。
|
● |
パリ条約加盟国以外の国でも、世界貿易機関の加盟国、商標法条約の加盟国又は日本と工業所有権の保護について相互に保護し合う旨の条約を締結している国との間では、一定の保護を求めることができます。
|
<デメリット>
● |
出願国数が増えればそれだけ費用も増えます。
|
● |
商標の維持・管理は各国毎に行う必要があります。
|
↑ページトップへ
3. 共同体商標(Community Trade Mark/CTM)
共同体商標(CTM)とは、OHIM(欧州共同体商標意匠庁)における1件の登録で欧州連合(European Union)加盟国全体をカバーする商標です。CTMは国内の商標権に影響を及ぼしませんので、国内の商標出願登録をすることも、CTMの出願をすることも、両方に出願することもできます。
CTM出願の際は、出願方法としてOHIMに直接出願をするか、欧州各国の商標庁に出願するかのどちらかを選ぶことができます。出願後に、OHIMによる方式審査と絶対的登録要件(識別力)に関する調査が行われ、次いで各国の商標庁による調査が行われます。この調査結果(調査報告書)は出願人に送付されます。出願人が調査報告書を受け取ってから少なくても1か月経過後に出願公告がされ、出願公告の日から3が月が異議申立期間となります。異議申立がなかった場合、異議申立が認められなかった場合、又は異議申立の認容に対する不服申立が認められた場合には、OHIMに登録されます。
<メリット>
● |
1出願でEU加盟国すべてをカバーする商標権が取得できます。更新などの手続も一度で済むため、容易な商標管理が実現できます。
|
● |
いずれかのEU加盟国で商標を使用していれば不使用による取り消しを免れることができます。
|
● |
EU加盟国の多くの国で出願する場合、各国毎の出願より廉価です。
|
<デメリット>
● |
一度拒絶になるとその効力がすべてのEU加盟国に及びます。ただし、拒絶がなかった国については通常の各国出願に切り換えることができます。
|
● |
取り消し、無効についても権利は一体として扱われるので、いずれかのEU加盟国で取り消し、無効が確定すると、他のEU加盟国においても権利が消滅します。
|
● |
商標権の譲渡は、国ごとにはできません。
|
● |
方式と絶対的拒絶理由の審査だけが行われ、相対的拒絶理由が審査されないで登録になりますので、同一又は類似する商標が多数併存します。
|
● |
審査結果が引用商標権者にも送付されるので、異議申し立てをうける可能性が高いです。
|
↑ページトップへ
→ 諸外国の商標制度の概要
へ
外国商標出願について何か疑問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。