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拒絶査定に対する不服審判と審決取消訴訟

 拒絶理由通知を受けた出願人は意見書を提出し、又は、補正や出願の分割を行うなどして、拒絶理由を解消するように対処することができます。しかしながら、それでも拒絶理由が解消しないときには拒絶査定となります。拒絶査定に不服のある出願人は、拒絶査定に対する不服審判を請求することができます。
 拒絶査定不服審判においても商標登録が認めらず拒絶審決を受けた出願人は、その決定の取り消しを求めて訴え(審決取消訴訟)を提起することができます。

1 拒絶査定に対する審判

 商標登録出願の拒絶査定に対する不服申立制度です。

(1) 請求人及び請求時期

請求人は拒絶査定を受けた者及びその承継人に限られ、請求期間は謄本の送達があった日から3か月以内です(44条1項)。

(2) 請求理由

 その査定に不服があるときは、請求することができますが(第44条1項)、登録査定に対しては審判を請求することができません。出願人が登録査定に対して不服ということはあり得ないという考えです(逐条解説)。
 審判請求人がその責めに帰することができない理由により期間内に請求をすることができないときは、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でその期間の経過後6月以内に請求することができます(44条2項)。「その責めに帰することができない理由」とは、天災地変のような客観的な理由に基づいて手続をすることができない場合の他、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしても、なお期間を徒過せざるを得なかったような場合があたります。

(3) 審理

 審理は、原則、書面審理で行われ、審判請求に理由がある場合には、通常、登録が認められます。審判手続において、原査定の理由とは異なる拒絶理由が発見された場合には、その拒絶理由を開示して意見書を提出する機会を出願人に与えなければなりません(55条の2、15条の2、15条の3)。

(4) 審決

 審判は、原則、審決によって終了します。(a) 請求認容審決(登録審決)では、拒絶理由はないとして原査定が取り消され、出願に係る商標を登録すべきものとするとの結論がでます。(b) 請求不成立審決(拒絶審決)では、原査定が維持され、出願に係る商標の登録は認められません。
 一方、(c) 原査定を取り消すとともに、事件を審査に差し戻す審決があります。この差戻し審決は、審判官は自ら登録の可否を判断しないで、審査官に差し戻します。差戻し審決があった場合、審決の判断は、その事件において審査官を拘束します(51条1項、特160条2項)。

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2 審決取消訴訟

 すべての法律上の争いは、究極的には裁判所において解決されますが(憲法76条2項)、知的財産権に関する争いのうち一定のものは特許庁における異議申立及び審判手続で争われます。この手続は、知的財産権に関する争いには特別な専門的知織を必要とするために特別に設置されたものです。
 審決取消訴訟は、特許庁が行った行政処分である審決等の取消を求めて東京高等裁判所の特別の支所である知財高裁(知的財産高等裁判所)に提起し得る行政訴訟です(商標法63条1項,特許法178条)。
 特許庁における審決等は行政処分ですから、それについての訴えは行政事件訴訟法の適用を受けるのが原則です。しかし、特許事件は技術的かつ専門的であり、審判手続きも準司法的手続きにより行われています。そこで、特許庁が行った審決等に対する取消訴訟について、行政事件訴訟法の特則が設けられています(商標法63条2項、特許法178条~182条)。
 なお、審判によらない特許庁の処分に対しては、通常の行政事件と同様に直接地方裁判所へ行政訴訟を提起することができます。
 

 審決取消訴訟の対象は、8種類の審判の審決と商標登録異議申立の取り消し決定です。

  • (1)拒絶査定に対する審判
  • (2)補正却下決定に対する審判
  • (3)商標登録無効審判
  • (4)不使用取消審判
  • (5)商標権者による不正使用取消審判
  • (6)商標権の移転の結果の不正使用取消審判
  • (7)使用権者による不正使用取消審判
  • (8)代理人等による不正使用取消審判

(1) 当事者適格

 原告は、当事者、参加人又は参加を申請して拒否された者でなければなりません(特178条2項)。被告は、原則として特許庁長官ですが、当事者系審判(商標登録無効審判、商標登録取消審判)の審決については、審判の相手方を被告としなければなりません。当事者に攻撃防御を尽くさせることが適切だからです。

(2) 提起の対象

 審決に対する訴え、審判及び再審の請求書の却下決定に対するものに限られます(特178条1項)。除斥、忌避、参加拒否等の決定に対しては提起できません(特143条3項,特149条5項)。

(3) 裁判管轄

 東京高等裁判所の特別の支所である知的財産高等裁判所に対して提起することが必要です(63条1項、特178条1項)。高度の専門性を有する特許や商標の事案については、特許庁の審判手続を尊重したものです。

(4) 出訴期間

 審決又は決定の謄本送達の日から30日以内にしなければならない。特許庁に対する手続と異なり、到達主義が採用されるため(民訴133条)、期間内に訴状を裁判所に届けなくてはならない。30日の期間は不変期間であるため(特178条4項)、裁判所は自由に期間を延長することができない。

(5) 審理範囲

 審決取消訴訟の審理は,審決の判断に誤りがあるか否かについてなされるものです。そして、「審決取消訴訟においては,抗告審判の手続において審理されなかった公知事実との対比における無効理由は,審決を違法とし,又はこれを適法とする理由として主張することができない。」(最高裁大法廷昭和51年3月10日判決 メリヤス編機事件)は、特許無効審判の審決に関しますが、商標の審決にも、この判例の射程が及ぶと解されています。
 しかしながら、商標の不使用取消審判においては、登録商標の使用の事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるとされています(最高裁小法廷平成3年4月23日判決)。

(6)取消判決の効果

 取消判決が確定した場合、審判官は引き続き審理を行ないますが、審判官は審決取消訴訟においてなされた判断に拘束されます(行訴法33条1項)。

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 法律は適切に活用すれば私たちの権利を守ってくれるものです。商標として認められた権利を守るためには、権利が取消される場合についての知識を持っておくことも重要です。

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