商標は商標法や不正競争防止法などの法律によって保護されています。ここでは、商標法による商標保護の概略についてご紹介いたします。
わが国の商標制度は、商品やサービスについて使用される標章、すなわち商標を保護することを定めて、その商標に対し、それが付された商品やサービスの出所を表示する機能、品質を保証する機能及び宣伝広告機能を持たせることにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて産業の発達に寄与し、一方で需要者の利益を保護することを目的としています。
商標は、自己の商品・役務と他人の商品・役務を識別を識別する機能(自他商品・役務識別機能)を、その基本的な機能として有します。自他商品・役務識別機能から派生して、出所表示機能、品質又は質保証機能、宣伝広告機能が生じ、それが業務上の信用となって財産的価値を有するようになるといわれています。
同一の商標が使用されている商品・役務の出所が同一であることを表示する機能です。出所とは、商品の製造者や役務の提供者に限らず、商品の販売者(発売元)なども含まれます。
同一の商標が使用されている商品の品質・役務の質が同一であることを示す機能です。需要者は、一旦購入した商品や提供を受けた役務に使用された商標と同一の商標が使用された商品・役務は質的に同一であることを期待し、営業者は、その業務上の信用を維持し発展させるために、需要者の期待に応えるように努力するようになりますので、商標は(品質又は質)保証機能を発揮するようになります。
商標が多く使用される使用されることにより、需要者に記憶され、商品・役務の需要を喚起・増大させる機能、つまり、需要者が商標を記憶し、商標に一定のイメージを思い浮かべるに至り、需要者に商品購入意欲を起こさせる機能です。
日本の商標制度においては登録主義が採用されており、商標登録に先立って特許庁による実体審査が行われたうえで設定登録により商標権が発生します。商標の発生に登録という方法をとる場合、商標の現実の使用が必要であるという制度と未使用でもよいとする制度があります。わが国では、未使用であっても登録商標は商標権として保護されます。
登録主義とは、特許庁の原簿に商標登録された事実に基づいて商標権の成立(発生)を認める主義をいいます。わが国は、登録主義を採用しています。そして、出願され登録される商標は、出願人が使用する意思を有していることは必要ですが、現に使用されている必要はありません(商標法3条1項柱書)。
商標登録の要件(又は、商権の発生)に使用の事実を必要とするという制度です。米国に代表されますが、米国においても、マドプロ出願(米国外から米国内での商標登録を求める場合)では、使用意思に基づく登録が認められています。この主義では、権利の帰属について先使用主義が採られますが、使用開始時期の先後を判定することは困難な場合が少なくありません。これを避けるために推定的効果を備えた登録制度が採用されています。
審判とは、一般的に、行政機関が司法手続に準じた手続に従って一定の決定を行う制度を指します。商標法は、主として次の8種類の審判を定めています。
審判は、原則として審決によって終結します。審決に不服がある者は、その取消しを求める訴え(審決取消訴訟)を東京高等裁判所の特別の支所である知財高裁(知的財産高等裁判所)に提起することができます。異議申立手続における取消決定についても、同様です(63条1項)。
(1) 登録査定があった場合、登録料の納付により、商標権の設定登録がなされ、商標権が発生します(18条)。商標権の存続期間は、設定登録日から10年をもって終了しますが、更新登録の申請により更新することができます(19条)。10年毎の更新登録料を払い続ければ未来永劫独占的にその商標を使用し続けることができます。商標は企業が永年多額の投資をして信用を築いてきたものですから、ブランドとして永久に維持することが合理的だからです。
(2) 商標権は、指定商品・役務について登録商標の使用をする権利を専有する独占権です(25条)。したがって、他人が商標権者に無断で、(a) 指定商品・役務と同一の商品・役務に登録商標を使用することは侵害となります。また、(b) 指定商品・役務と同一の商品・役務に登録商標に類似する商標を使用すること、(c) 指定商品・役務に類似する商品・役務に登録商標に類似する商標を使用することについても、商標権の侵害なります(37条1項1号)。
(a)は専用権、(b),(c)は禁止権と呼ばれます。さらにこれら侵害行為の一定の予備的行為についても商標権侵害(間接侵害)となります(37条1項2~8号)。
(3) 商標権者に対する救済
商標権者は、その商標権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、侵害の差止めを請求することができます(36条)。また、侵害により自己が受けた損害の賠償を請求することができます(38条,民法709条)。
このように、商標は商標法によって保護されています。商標の保護に関して疑問や質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。